縄文の名残り;土偶の神秘
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  • 2023.9.4 up

    博物館に来た、見た、圧倒された。国宝土偶の迫力は本当にすごい。縄文人の祈りが最高の芸術へと昇華した逸品。
    しかし土偶には解けない謎がある。驚くべきことに土偶は、一万年もの長いあいだ、十字形、複数の穿たれた穴、顔面上部のつながった眉などの特徴を保ち続ける。ところが、この謎は神話をベースとして読み解けば土偶がなんであるかを理解することが可能なのだ。
    古事記のイザナギ、イザナミ兄妹のあいだに生まれたヒルコ(3歳まで歩くことができなかった→四肢のない十字形土偶)の物語、世界各地にみられる、殺された神が腕を切り落とされて残った体の穴から作物を生んだという物語(いわゆるハイヌウエレ型神話→複数の穴と腕のない土偶)、月が生み出す夜露によって女性の妊娠出産がもたらされる物語(仏のローセスのビーナスが有名。日本では夜露を受けるためのつながった眉をつけた土偶となる)などがそうだ。
    土偶は近親相姦による災い、作物の育成方法、また、生殖の神秘を伝承するための、文字を持たなかった彼らの言語表現であるとともに、それらと表裏一体となって五穀豊穣や子孫繁栄を神々に祈るための道具であったに違いない。土偶の本当の姿は縄文人が口承した何万年にも遡る人類の大切な記憶を守り伝えるための貴重な記録媒体だったのだ。